選択式設問の正誤~論理学からのアプローチ~その1(林)
国語の演習問題は、解答方法を基準に分類すると、記述式と記号選択式に大別できます。
記述式については別の機会に触れるとして、今日は記号選択式について考えます。
設問の形式を単純にモデル化すると次のとおりです。
傍線部Xについて、その説明として最も適切なものを次のp~tから一つ選べ。
正誤の理由は何か
正しい選択肢と誤った選択肢はどこが違うのでしょう。
言い換えると、正しい選択肢はどういう理由から正しいと言えるのでしょうか。
そして、誤った選択肢はどういう理由から誤りだと言えるのでしょうか。
常に成り立つ理由を求める
その理由を恣意的でも個別的でもなく、ということは場当たり的ではなく、常に成り立つ形式によって、つまり論理的に説明することは可能でしょうか。
この問題に論理学からアプローチしてみましょう。
ただし今回はアプローチするための準備として、問題に取り組むために必要な術語と考え方について、最小限の説明をします。
真と偽と命題
ある文が事実を述べようとしたものである場合、
それが事実の通りならば真
事実の通りでないならば偽
と言います。
そして、真偽が言える文のことを
命題
と言います。
二値原理
文のなかには真であるか偽であるか、明確に決められないものもあります。
たとえば、
モネの池はすばらしい観光地だ。
という文は、真か偽かきっぱりとは言えません。
今回の考察では真か偽か明確に言える文だけを対象とします。
これは真と偽のふたつの「値」しか想定しないので、「二値原理」と呼ばれます。
二値原理:命題は真か偽のいずれかである
論理学のなかには二値原理を採用しないものもあります。
しかしここでは二値原理を採用する標準的な論理学に従って考えていくことにします。
連言と選言
命題Pと命題Qがどちらも真であることを主張する命題を
PとQの連言(れんげん)
と言い、
「P∧Q」と書きます。
「PかつQ」と読めばよいでしょう。
命題Pと命題Qの少なくともどちらか一方が真であることを主張する命題を
PとQの選言(せんげん)
と言い、
「P∨Q」と書きます。
「PまたはQ」と読めばよいでしょう。
具体例を使った説明
抽象的な説明ではよくわからないかもしれません。
日常の言葉を使って例を挙げてみましょう。
太郎さんはうどんとそばを食べた。
これが連言です。
丁寧に言うと、
太郎さんはうどんを食べた
かつ
太郎さんはそばを食べた
となります。
太郎さんが本当にうどんとそばを食べたのだとすれば、
この連言は真です。
太郎さんがうどんとそばのどちらかだけ食べた場合は、この連言は偽です。
またうどんとそばのどちらも食べていない場合も、この連言は偽です。
選言の例も挙げてみましょう。
よしこさんは猫か犬を飼っている。
これが選言です。
丁寧に言うと、
よしこさんは猫を飼っている
または
よしこさんは犬を飼っている
となります。
よしこさんが猫と犬のどちらかを飼っている場合、この選言は真です。
よしこさんが猫と犬のどちらも飼っていない場合は、この選言は偽となります。
よしこさんが猫と犬の両方を飼っている場合も、この選言は真です。
ここは注意が必要です。
このような「両方でもよい」という選言を「両立的選言」と言います。
「どちらか一方だけしかダメだ」という選言は「排反的選言」と言います。
この考察では両立的選言を採用します。
まとめます。
P∧Q 命題Pは真 かつ 命題Qは真
P∨Q 命題Pは真 または 命題Qは真
P∧Qの真偽
Pが真であり、Qも真であるとき、P∧Qは真
Pが真であり、Qが偽であるとき、P∧Qは偽
Pが偽であり、Qが真であるとき、P∧Qは偽
Pが偽であり、Qも偽であるとき、P∧Qは偽
P∨Qの真偽
Pが真であり、Qも真であるとき、P∨Qは真
Pが真であり、Qが偽であるとき、P∨Qは真
Pが偽であり、Qが真であるとき、P∨Qは真
Pが偽であり、Qも偽であるとき、P∨Qは偽
となります。
真理表
命題Pが真であることを 1
命題Pが偽であることを 0
と表すことにして、
(1,0)を命題Pの真理値と呼び、
命題の真理値を表にしたものを真理表(真理値表)と言います。
命題Pと命題Qについての連言と選言の真理表を載せておきます。

今日はここまでにしましょう。
次回は術語をもう少し説明してから、冒頭に示した問題にアプローチします。
練習問題
最後に連言と選言の問題を出しておきます。
難しくないので気軽にチャレンジしてください。
問題1
次の文を【 】かつ【 】という形か
【 】または【 】という形に
書き換えなさい。
(1)赤坂さんはくつとカバンを買った。
(2)マーサ21かモレラ岐阜のどちらかは営業している。
必ず主語と述語をもった二つの命題を「かつ」もしくは「または」でつなぐ形で答えてください。
問題2
次の命題Pと命題Qに対して、P∧Qの真偽とP∨Qの真偽を言いなさい。
1.P:岐阜県の県庁所在地は岐阜市だ。
Q:愛知県の県庁所在地は名古屋市だ。
2.P:岐阜県の県庁所在地は岐阜市だ。
Q:愛知県の県庁所在地は岡崎市だ。
3.P:岐阜県の県庁所在地は大垣市だ。
Q:愛知県の県庁所在地は名古屋市だ。
4.P:岐阜県の県庁所在地は大垣市だ。
Q:愛知県の県庁所在地は岡崎市だ。
どうでしたか。
問題2は真理表を書くと真偽の判定が容易だと思います。
答え合わせは次回のブログで。

