根尾谷の紅葉(林)
休日の午後、ふと思い立って淡墨公園に出かけました。
福島県の「三春滝桜」、山梨県の「山高神代桜」とともに日本三大桜に数えられる根尾谷淡墨桜のある公園です。
とは言え、私が訪れるのは青葉が日ごとに色濃く茂りゆく初夏や、深雪にうずもれて白銀のパレスとなる厳冬のころばかりで、花の咲く姿は一度も見たことがありません。
今回は紅葉を見に行きます。
いつもは根尾川沿いに本巣縦貫道路(国道157号線)を北上しますが、今回は別ルート。
御望山の裾をまわり、秋沢から雛倉を抜けて里山かおり街道を進みます。
鹿穴峠で本巣市に入り、金坂峠を越えて本巣市金原で国道157号線に合流します。
金坂峠のあたりは道幅が狭くなりますが、それ以外は片道1車線の走りやすい山路です。
交通量も少ないので、ゆっくりとドライブを楽しみたい人にお薦めです。
157号線をしばらく北上すると、根尾川がヘアピンさながらに鋭く湾曲する上を通ります。
ここは日当(ひなた)、宇津志(うつし)地区。
私が常飲するほうじ茶の産地で、根尾川沿いの段丘に茶畑が広がります。
根尾川をさらに北に進んで水鳥地区に入ると、左岸に根尾谷地震断層観察館が見えてきます。
1891年に起きた濃尾地震(マグニチュード8.0)の際に生じた「根尾谷断層」を保存・展示しています。
この断層は上下の変位が約6メートルに及び、国の特別天然記念物に指定されています。
以前に訪れたことがあるので、今回は対岸から建物を眺めるだけです。
樽見鉄道樽見駅の手前で左折し、根尾川を西に渡って淡墨公園のふもとに到着しました。
急勾配の坂道を上がって淡墨桜のすぐ近くに車をとめることもできるのですが、道が狭いので歩いて登ったほうが安心です。
道路沿いのとても小さな商店街はシーズンオフのためお休みしています。
来春の営業を見越してか、年配の男性がひとりで大工仕事に励んでおられました。
淡墨桜は樹齢1500年とも言われ、国の天然記念物に指定されています。
雪の重みで枝が折れるのを防ぐための「雪吊り」を施されたばかり。
花はもちろん一輪も咲いていませんが、高く大きく枝を伸ばして聳え立つ姿は、荘厳で神々しさを感じさせます。
紅葉は淡墨公園の芝生広場と、その北に広がるうすずみの森で見ることができます。
広場の周囲には、まだ若い木々が植えられて、黄色やだいだい、朱色に深紅と、とりどりに葉を染めています。
緑も交えた色相の変化がリズミカルです。
公園を抜け、渓谷に架かる赤い吊り橋を渡って展望台に向かいましょう。
道は整備されていますが、通る人が少ないためでしょうか、枯れ葉を踏みしめながら登ってゆきます。
木々の枝のすき間から、眼下を流れる根尾川が垣間見えました。
南に眼を転じると、山峡の先に濃尾平野が広がります。
ただし今日は雲海に沈んで見えません。
展望台から林道をまわって、渓流に降りる細い道をたどります。
色づき始めた紅葉が天蓋となってあたりを黄色く照らしています。
瑠璃色の空に照り映える紅葉の美しさは言わずもがな。
時雨に洗われた紅葉のしっとりと落ち着いた麗しさも味わい深いものです。
水分を含んで清新に輝く苔の緑とのコントラストが目を愉しませます。
今日の走行距離は55.5km。
秋の風情を存分に堪能できたショートトリップでした。