伊吹山との邂逅(林)

5月から毎週金曜日に羽島校で授業を受け持つようになりました林です。
小学6年生の国語、中学3年生の社会、高校2年生の国語を担当しています。
他の学年のみなさんも、どうぞ気軽に声をかけてくださいね!

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私は岐阜市の北西に住んでいるので、右手に揖斐や養老の山並みを眺めつつ羽島校に来ています。
とりわけ池田山に隠れていた伊吹山がその魁偉な山容をだんだんと現してくるさまに心ひかれます。
(山々を望み見るのは赤信号で停車しているときだけです!)

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伊吹山は、中学生のときに『古事記』の倭建命(『日本書紀』では日本武尊)の神話を読んで、強く印象に残りました。
それゆえ、6年前に岐阜に転居してきて、真っ白に雪化粧した伊吹山を見たとき、これこそまさに…と感激しました。

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それは『古事記』の白いイノシシを連想したからです。
日本古典文学大系『古事記 祝詞』(岩波書店、1958年)から引用しましょう。
ただし漢字は新字体に改め、句読点とかぎ括弧を補います。
また( )内は『古事記』につけられた分注です。

以其御刀之草那芸剣、置其美夜受比売之許而、取伊服岐能山之神幸行。
於是詔「玆山神者、徒手直取而。」
騰其山之時、白猪逢于山辺。
其大如牛。
爾為言挙而詔「是化白猪者、其神之使者。雖今不殺、還時将殺而。」騰坐。
於是零大氷雨、打惑倭建命。
(此化白猪者、非其神之使者、当其神之正身、因言挙見惑也。)

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続いて私製の現代語訳を載せましょう。

倭建命は草那芸剣(くさなぎのつるぎ)を新たに結婚した美夜受比売(みやずひめ)のもとに置いて、伊吹山の神を殺しに出かけた。
そして「この山の神は、素手で真正面から殺そう」とおっしゃった。
伊吹山に登ったとき、山のほとりで白いイノシシに遭遇した。
その大きさは牛のようであった。
倭建命はここで「この白いイノシシに化けているのは、伊吹山の神の使者であろう。いま殺さなくても、伊吹山の神を倒して帰ってきたときに殺せばよい」と大言して山に登った。
そこで伊吹山の神は大いに氷雨を降らせて、倭建命を失神させた。
(この白いイノシシに化けていたのは、伊吹山の神の使者ではなくて、神自身であったが、倭建命は大言したために判断を狂わされたのである。)

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伊吹山は、武勇に優れて英邁な倭建命を退けた神として、中学生の私を大いに驚かせました。
連休中に羽島校の近辺を散策していて、たまたま八劔神社を訪れました。
倭建命を祭祀しているとのこと。
さすがは伊吹山を擁する美濃国と感慨にふけりつつ、初夏の陽光きらめく境内にしばしたたずみました。

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